血液疾患の種類と特徴
血液疾患には、
良性疾患と腫瘍性疾患があります。
腫瘍性疾患には、
良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
1. 良性疾患
鉄欠乏性貧血など日常的疾患。不足する成分等の補充療法を行います。
2. 先天性出血性疾患
血友病、フォンヴィルブランド病などの先天性出血性疾患は、血液凝固学を理解した生涯にわたる治療が必要です。日常生活だけでなく結婚、事故、手術、病気などにも対応が必要です。急速に治療法が進歩しています。
3. 良性腫瘍
骨髄増殖性腫瘍(真性摂家急増多症、本態性血小板増多症、骨髄繊維症)は血栓症のリスクがあり生涯にわたる治療が必要です。
良性単クローン性高γグロブリン血症(MGUS)は、一部が治療の必要な多発性骨髄腫に進展するため、半年から1年毎の定期的経過観察が必要です。
4. 悪性腫瘍
急性白血病 | 治癒を目指して、基幹病院で積極的治療を行います。維持療法であれば当院で治療可能です。 |
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慢性白血病 | 分子標的薬を使用して当院で十分治療可能です。 |
多発性骨髄腫 | 臓器障害が強い進行期は基幹病院で治療を行います。状態が安定すれば当院で治療ができます。 |
悪性リンパ腫 | 初回急性期治療は基幹病院で行います。急性期後の治療あるいは経過観察は当院で可能です。 早期の濾胞性非ホジキンリンパ腫は、治療を行わずに、治療が必要となるまで慎重な経過観察を行うことがあります。完全寛解後も再発の可能性が高いため長い経過観察が必要です。 骨髄異形成症候群:同種移植が可能な場合以外の根治的治療は期待できません。移植不能の高リスク群に対する治療、低リスク群への輸血療法は十分に対応できます。 |
治療方針
良性疾患に対する治療方針
鉄欠乏性貧血など。原因を確定して、必要十分な補充療法が必要です。
胃全摘後のビタミンB12欠乏症は数か月ごとの生涯にわたる補充が必要です。
血液腫瘍に対する治療方針
治療法は国内外のガイドライン等に示される標準療法を行います。
血液腫瘍では、治療をやめても病気が再び現れることのない「治癒」が期待できるため、最初の目標は「治癒」にあります。標準的治療を基本とし、連携する基幹病院での治療が主体となります。
血液腫瘍の中には治癒が目指せないものがあります。しかし、治療によって病気をコントロールできるものもあります。
最初は治癒が目指せても、再発などで治癒が目指せないこともあります。これらの場合には、治療をしながら日常生活に大きな支障のない状態をできるだけ長く保つことを目標にします。10年以上、あるいは事実上平均寿命まで病気をコントロールできる状態にすることができるものもあります。基幹病院等で実施されている「臨床治験」があれば積極的に紹介させていただきます。
残念なら、繰り返す再発、合併症等で標準的治療ができない場合は、余命が限られます。アドバンスケアプランニング、事前意思確認、心肺停止時における蘇生術の拒否表明、緩和ケア等を取り入れて人生の最終段階においてできるだけ穏やかな最期を迎えられる医療を重視します。
血液疾患に対する治療方法
- 化学療法
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古典的抗がん剤を用いた治療です。アルキル化剤のように遺伝子を壊す治療薬は、正常細胞にも異常を来し2次性の悪性腫瘍を起こすこともあります。分子標的薬や抗体療法など化学療法を含まない治療が進んでいます。
- 分子標的薬
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病気の原因となる機序を特異的に抑える治療です。副作用は化学療法に比較して軽微です。しかし、一般的に非常に高額ですが、高額医療制度などの制度が利用できます。生涯にわたる治療が必要でしたが、一定以上の効果があれば、治療をやめても再発しない割合が確実に増えています。
- 抗体療法
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細胞の表面の蛋白に特異的に結合し、免疫力を利用して細胞を壊す治療です。悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に、併用療法で標準療法として使用されます。
- 支持療法
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病気に合併する病気あるいは治療による副作用を抑える治療です。輸血療法も含まれます。
- 感染症予防薬
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免疫力が低下してときに細菌、真菌、あるいはウイルスからの感染を予防します。
- 輸血療法
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不足する血液を最小限で補充する治療です。赤血球、血小板、血漿成分の補充ができます。
- その他
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治療としてステロイドを使用することがあります。この場合は骨粗鬆症が進むことがあるため、そのための予防的治療を行います。